つれづれ日記

 
生ものたちの知恵(池のフナ編 つづき) 2009年1月3日
すぐさま、裏山からドドッと流れ落ちるところをのぞきに行った。ここは、降った雨が小さな滝のように流れ落ちる場所で、水が綺麗な上、絶好の餌場となっていたのを知っていたからだ。

僕は、流れ落ちる水しぶきの中をジーッとみた。小ブナはみえなかったが、水中のコンクリート壁に3センチほどの小さなチン(方言で、ハゼを小型にしたような淡水魚)が4~5匹着いて、餌が落ちて来るのを待っていた。

「おい、もう池に魚はいるったい。チンがいるったい。」と思わずうちの奥さんに言った。

「おい、ここをのぞいてみてみ。」と言ったら、興味なさそうにちょっとのぞいて、「ウ~ン不思議やね~。どこから来たんやろうね~?」と気のない返事だった。うちの奥さん、食べ物だったら目が輝くんだがネ~。

この池に小ブナがいるのは間違いなさそうだ。

大雨での増水時に、流れ込んだのだろうか。それとも、干し上げられた池に、何ヶ月もの間、潜んで生きていたんだろうか?上の池から小ブナが、少しは入ったにしても、何十匹も荒手を越えるほどの多量のものが流れ込むだろうか。

この池の上に小さな池があるんだ。増水時、小ブナがこの池から逃げ出し、その一部がコンクリートの溝を通り、この池に流れ込んだと仮定してみよう。

仮に1000匹もの小ブナが流れ込んだとする。しかし、周囲が900メートルほどある大きな池なので、どこにいるか分からない程度となろう。濁流を下り、やっと広々とした静かな世界にたどり着いた小ブナが、数日間に300メートルほど離れた池の荒手を越える可能性がどれほど存在するであろうか。

僕は、子供のころ、大変不思議なことを経験したことがある。小学生の頃だ。

この池の上側にハスが生えてて、よく蓮根掘りをした。ぬかるみがかなり乾いた状態の場所だった。蓮根を掘っていたとき、その所からフナがひょっと出てきた。そして、跳ねたんだ。晩秋か冬の寒いときだった。フナは、気温がさがれば、体温も下がり、仮死状態になることは想像できる。だが、水の中でもない、「想像を超える場所」で生きていたのだ。

この池は、干されたときの流れの状態からすれば、主に4箇所から流れ込んだ水が溜まるようになっている。1箇所は上の池からの一部が増水したとき入るようになっており、もう一箇所は、生活排水が入るようになっている。残り2箇所は、裏山からの湧水だ。この清水が流れるぬかるみの底の水温は年中ほぼ一定で、13~15℃位であろう。

知恵たけた小ブナたちは、白鷺などの難を逃れ、このようなぬかるみの深い場所に潜み、水が増えるのを待っていたのかも知れない。思えば、僕らよりずっと厳しい環境の中で生きている。水の中には、ブラックバスやブルーギル、ナマズ、ウナギなどの肉食魚がひしめき、外には水鳥たちが待ちかまえているのだ。灌漑用の池は、常に水が増減し、小ブナたちの生活場所が絶えず増えたり減ったりしている。水が減れば、危険性は極度に高まるのだ。一瞬たりとも油断ができないであろう。

この池を知り尽くし、いざというとき、潜む場所を知っているものしか生き残れない。

すごく知恵たけたものしか生き残れないのである。

秋になり、またも池が干された。やっと池の水が満杯になったのに…。池の施工工事に何か問題があったようだ。

池の水は、錠元が改修されたため、池の底にわずかの水溜りも残さず、短期間に、まるでお風呂の栓を抜いたようにサッと干し上げられた。「この池は、もう魚が住めない所になってしまったんだ。何とか生き残った小ブナたちも今度こそ駄目だろう」と思った。

春が過ぎて梅雨になった。荒手が前年のようにあふれた。

僕がそこで見たものは、荒手を越えた小ブナが、池にもどろうと必死に跳ねている姿だった。

この光景に、深い感動とすごい生命エネルギーを感じたね~。

 



 
生ものたちの知恵(池のフナ編 ) 2008年11月8日
家の前に大きな古池がある。我家の庭みたいなもんで~。この池のお蔭で、蘭が良く育つんだ。

この池は、なが~く干されなくて~、30年以上経つだろう…。

それが、一昨年、干されてね~、僕は、心が随分痛んだ!。

この池に、老いた大鯉や大ナマズが住んでいるのを知っていたからね~。

かれらは、僕の友達みたいなもんだ。

この池は、むかし、水がきれいでね~、子供の頃、よく泳ぎ、釣りをして遊んだ。

藻がたくさん生えてて、いろんな魚が住んでいたんだ…。

鯉に、ナマズ~。フナにウグイに、餌取りのうまいジャコ・ニゴ。ハゼのような形のチンに、エビ、カニ、シジミ、カラス貝など、いろいろいたんだ。

それが~、だんだん汚くなってね~。今じゃ、どろ池だ。理由は分かっている。

20歳を過ぎたころ、一時期、食用鯉が何万匹も飼われたことがあってね~、池を綺麗にする藻が全滅したんだ。

それに、最近、田んぼの圃場整備があって~、池に流れ込む小川がコンクリートになってしまった。更に生活排水の流れ込みも加わって、藻も魚も、小川に住めなくなってしまったんだ。池にヒシばっかり茂るようになってね~、このヒシが、冬に腐り、池が汚く濁るという訳なんだ。

池が干されたのは、稲に水が不用になる秋だった。この時期は、通常、来年のために水を溜める時期だ。しかし、池の水がどんどん減っていくんだ。

池の水が減ってくると、釣り人が増えてね~。5~60センチほどの大ナマズが、釣り捨てられ、腐って異臭を放っていた。白い目をしてね~。

やがて知ったのだが、池の荒手と錠元の改修工事が行われるとのことだっだ。

完全に池が干し上げられてしまう~、池の魚たちに逃げ場はない…、絶対絶命だ!

もう魚たちが助かる可能性は、ゼロなんだ。

30年以上の、この池の歴史に幕が下りるのだ。ゆうゆうと泳ぐ大鯉の姿をこの池で見かけることは、二度とない。

最後の錠栓が抜かれ、水位は、深いところで1メートル程度になった。下は、ぬかるみだ。村の衆が、簡単なボートに乗って魚を追い回していた。僕は、遠くからじっと毎日眺めていた。余り見たくなかったんだ、こんな光景は。後で聞いたのだが、1メートルほどの鯉がかなりいたそうだ。大鯉は、殺さないようにどこかに運ばれたとのことだ。

僕は、この話を聞いたとき、「よかったなあ、せめてもの救いだ。」と胸を撫で下ろした。

魚が獲られたあと、小魚を狙って白鷺が、真っ白になるほど群がった。すごい数なんだ!。鳥たちにとっては、絶好の餌場となった。白鷺やカラスが群がるのを見て、僕はとても複雑な気持ちだった。小魚たちは、壮絶な戦いにさらされているのだ。

獲物が少なくなってきたのだろう。白鷺が、次第に深みにはいっていった。勇敢というか、知恵たけたやつがいて、水面に長い首だけ出してついばんでいるものもいた。こんな光景は、はじめてだ!。

やがて、だんだん鳥達がいなくなり、池は、静まり返った…。完全に小魚たちは食べ尽くされたんだ。魚一匹いない死の池と化したと思っていたね~。

完全に干され、水溜まりはなくなり、ぬかるみの中を、小さい川のようにくねりながら何箇所からか、水は細く流れていた。

冬が過ぎ、やがて春になった。池の改修工事が終わり、錠が閉められ、何事もなかったように、池は満杯になった。

梅雨になり、すごい豪雨が降った時だった。溢れた池の水は、荒手のせきを大きく越えて 川となって流れた。すざましい水量だ。やがて雨が止み、数日で溢れ出る水がなくなった。

僕は、気の向くまま、ふらっと荒手を見に入った。改修された荒手のコンクリートがやたらに白く光ってみえ、うらめしく思えたね~。 荒手の中に水圧を弱めるための大きな枡が設けられている。フッとその中をのぞきこんで驚いた。7~8センチほどの小ブナが何十匹も泳いでいるではないか!。信んじらない光景だ!。大雨のとき、池から溢れた水にのって流れ出たに違いない。

枡に続く排水溝は、すごい勾配で、高さが6~7メートルほどもあり、コンクリートで出来ている。下から上ってくる可能性はゼロパーセントだ。垂直の岩壁を上るというウナギだって極めて難しいだろう。

枡を泳ぐ小ブナの数からすれば、池には、相当の小ブナがいる可能性があるのだ。

たった2、3ヶ月の間に、どこから入ったんだろう。

不思議で不思議で仕方がなかった!!。

つづく

 



 
ネズミ対策編(ネズミのくれた贈り物) 2008年10月15日

翌朝、太陽がかなり高くなって目が覚めた。10時ぐらいだったと思う。良く寝た……。


疲れ果てていたもんねえ~。「ネズミのかかったとこ、どうなっているかなあ。」と思いながら見たんだ。ふさふさした株の硬い葉が1~2枚折れかかり、その葉はかじられ、ペッタンコのネバネバが、その葉にベッタリと付いていた。新しい被害の新芽は、一鉢もなかった。

「ネズミは、葉っぱに飛びつこうと思ってペッタンコの上に落ちたのかなあ…。」、「ペッタンコにかかって、苦しまぎれに葉っぱにしがみついたのかなあ…。」なんて思ったりした。

「仲間が一匹捕まったんだから、用心して暫くは来ないだろう。」「その内、必ずやってくる。」と思っていた。

2週間ばかり、夕方、ペッタンコをかけ続けた。朝、ペッタンコを片付け、夕方、かけたんだ。「どこかで、仲間がじっと見ているかも知れない」と思ったりした。しかしネズミが来た気配がまったくない。ペッタンコにかかったのは、虫とヤモリと小さなヘビだけだった。殺鼠剤も食べたあとが、少しもないんだ。

1ヶ月ほど過ぎたときだった。うちの奥さんが言うんだ。「おとうさん。ネズミにかじられたとこ、みんな葉が伸びてきたね~。」そう言われてみると、全ての鉢の新芽が伸ている。「堀りちらして、新芽がない。」と思った蘭も、ちゃんと新芽が伸びていた。それに、葉先の枯れ込みがまったく見当たらない。唾液に何か含まれているのかなあ…。
 

ネズミは、ちゃんと手心を加えながら、新芽を食べていたんだ。驚くことに、葉をつくる成長点というか、その部分を傷めないように食べていたんだ…。

あれから、3ヶ月以上経った。かじられた葉先は変形しているが、そのまま枯れ込むこともなく、伸び続けている。あれ以来、ネズミの被害は止まったままだ…。


僕は、かじられた春蘭の、そして元気に育っている葉をみるたびに、何かネズミに教えられたような気がして、心がジィ~ンとするんだ。

 



 
ネズミ対策編(ネズミ捕獲成功) 2008年10月3日

やられた作場の周囲には、貴重な蘭を育てているハウスもある。パソコンにも、ノネズミの対策は、ほとんど見当たらない…。 どうしたものかねえ~。

そのときピカッと頭が光った。子供のころ、仕掛けていた鳥罠を思い出したんだ。

バネになりそうな適当な木をキュウと曲げて、棒と棒との間にパチンと鳥がはさまるようにするんだ。周りを竹や笹で囲い、中に草の実や木の実を入れておくんだ。鳥がかかった記憶は一度もないが、ネズミは、いつもかかってのびていた。

「そうだ。これだ。ヤブコウジやナンテンの赤い実でやっらをつるんだ。」 僕は、いそいそと子供のころいっぱいあった裏山のやぶに、勇んで行った。しかし、がっかりするのにそう時間はかからなかった。やぶの中は、ヤブコウジはあったが、赤い実なんて一個もないんだ。あるはずないもんね~。6月だもん。それに、鳥やネズミが残すわけないもん……。ばかだね~僕……。慌てて家にもどって、ナンテンを見た。赤い実がついてるはずがない。裏山のはぜの木をみたが、はぜの実なんて一個もついてなかった。ノネズミが食べそうな実は、ないのだ。春蘭を餌にネズミをつるしか道はない。被害の拡大を防ぐためには、これしかないのだ。

今夜こそ、必ず射止めてやる……と思いながら準備にはいった。

「僕がネズミだったら、どこの作場を今宵、狙おうか。」「ネズミの気持ちになることが、大切なんだ。」そう思いながら、ふさふさと茂り、おいしそうな新芽が沢山付いている鉢を20鉢程度、やられた作場のここぞと思う位置に並べ、その周りをペッタンコで囲んだ。隣接する作場にも、ところどころ蘭掛けから鉢を抜いてペッタンコを周到においた。

「もう、くたくただ~、早く寝ろう。」と言って電気を消した。早かった。すぐさま、「パタン、キュウ、キュウ」と言う泣き声がしたんだ。やっぱり、どこからかジーッと見ていたのだ。見事においしそうな芽につられたのだ。


「おとうさん、かかってるよ。大きいやつが。」「あしたまで、ほたっておこうか。」と奥さんの声が聞こえた。やっぱり、僕の知恵が勝ったんだ。ネズミを捕らえたものの、可哀そうな気がした。「直ぐに楽にするったい。」と言ったら、うちの奥さん、さっさと始末したようだ。「一匹捕まえたから、しばらく来ないだろう。」僕は、深い深い眠りについた。

次回につづく

 



 
ネズミ対策編(ネズミ掃討作戦開始) 2008年9月27日

「おい、ネズミにやられた。」「大きなおおごとたい。」

「ネズミに効くやつ、なんでもいいから、すぐ買ってきてくれ。」

「思い切って、金使ってもいいから。」「いろいろ買って来るったい。」と、うちの奥さんに言い、買いに行ってもらった。買い物に行っている間、じっと侵入経路を見て回った。

多分、地元で言う野ネズミだろう。作場のすぐ外側にある木の下と隣接した作場の横に掘りたての穴が2つあった。「地下にトンネルをつくってはいってきたんだ。これは、やっかいだぞ。」と思った。

一度、ドブネズミを捕らえたことがある。このネズミは、大胆にも炊事場の窓の網戸を食い破り、床に穴を開けて荒らした。金網の捕獲器で、中に餌を吊るしておく罠があるだろう。これで捕らえたんだ。すごく大きくて、子猫ほどあった。毛が荒々しく、どう猛で、近づいたらカッと威嚇して金網に噛み付いた。あれは、すごかった…。

そうこうしている内、うちの奥さんがネズミ捕りを買ってきた。いろいろぼっそりである。

袋に入った赤色の殺鼠剤、毒入りのぶら下げる切餅ようの餌、ネズミのペッタンコ、それに金網の捕獲器だった。

「どこでもここでも、かけておくたい。ネズミの通りそうなとこ。」と言って、かけさせた。

殺鼠剤を、2時間ほどかかって、ぶらさげたり置いたりしていたようだ。ペッタンコも地面の穴の横だけでなく、一見、通りそうな場所にあっちこっち置いていた。金網式の捕獲器も、中にさつまいもを吊るし、木の下にある穴の横に置いていた。見たからには、十分な仕掛けのように見えた。

翌朝、春蘭を見て仰天した。やられた。見事にやられた……。15鉢程度、またやられた。今度は、硬い葉っぱまでかじって遊んでいる。殺鼠剤は、何一つ食べていなかった。ペッタンコには、虫やヤモリがかかっているだけだった。捕獲器のさつまいもは、そのままだった。臭いがつかないように、新品のゴム手袋を付けさせて罠をかけさせたのだが、まるでネズミが、それを見ていたように思えた。

どうしてくれよう。仲間がいるかも知れない。モグラのように、トンネルを作って進入してくるから手の付けようがない。気持ちは、沈むに沈んだ……。

次回につづく

 



 
ネズミ対策編(ネズミ騒動) 2008年9月23日

今年の6月の終わりの頃だった。春蘭の新芽が土をきって少し伸び始めた時でした。

生まれて初めてチュウ公にやられた。しかも、特別管理の春蘭をですよ。勿論、雑物もですがね。かなりの数です。30鉢程度は、やられたと思うよ。春蘭がネズミにやられるなんて、一度も考えたことがなかった。ずっと以前、地元にウチョウラン会というものがあって、「ウチョウランのいもが被害にあった」 というのは聞いたことがあるけど。

ネズミていうやつは、知恵たけているからね~ 。最初は、2鉢程度だったと思うけど、新芽付近の表土が乱れて新芽がないんだ。「雀でもはいったのかな、それにしても春蘭の新芽を食べるなんて」と思ったんだ。翌日、見て驚いた。10鉢程度に増えているじゃないですか。今度は、新芽の根元をほじり散らして土を切ったばかりの新芽までかじってるんだ。慌てて、隣接する作場を見たんだ。こちらも、隅の鉢が4、5鉢やられているじゃないですか。山の春蘭は、冬の間にネズミやウサギなどに食べられてまともな葉っぱがないのは、よく見ますが。栽培しているのが、食べられるなんて。

「えらいことになったな」と思った。「春蘭が全滅するぞ」と思った。ネズミとの戦いが始まったのだ。

次回につづく